幼少の孫への生前贈与は可能?相続税対策で注意すべきポイントを税理士が解説

はじめに

相続税対策として、祖父母から孫へ生前贈与を行う方法はよく利用されます。子どもではなく孫へ財産を移すことで、相続財産を早めに減らすことができ、将来の相続税負担を抑えられる可能性があるためです。

しかし、幼稚園児や小学生など、まだ幼い孫に対して贈与を行う場合には注意が必要です。単に孫名義の口座へお金を振り込めば贈与が成立する、という単純な話ではありません。

贈与は「あげる側」と「もらう側」の意思表示があって初めて成立します。そのため、孫が幼少で贈与の意味を十分に理解できない場合には、親権者である父母が法定代理人として関与し、贈与の事実や財産管理の実態を明確にしておくことが重要です。

特に相続税の税務調査では、「本当に孫へ贈与された財産なのか」「実質的には祖父母や親が管理している名義預金ではないか」が確認されることがあります。せっかく相続税対策として贈与を行っていても、後から名義預金と判断されれば、相続財産に含めて申告し直す必要が生じる可能性があります。

この記事では、幼少の孫へ生前贈与を行う場合のメリットと、税務上注意すべきポイントについて解説します。

孫へ贈与する相続税上のメリット

孫への贈与には、相続税対策として大きなメリットがあります。

まず、孫は通常、祖父母の法定相続人ではありません。そのため、孫が相続や遺贈により財産を取得しない限り、相続開始前の一定期間内の贈与を相続財産に加算する「生前贈与加算」の対象にならないケースがあります。

令和6年1月1日以後の暦年課税による贈与については、生前贈与加算の対象期間が段階的に7年へ延長されています。国税庁も、令和6年1月1日以後の贈与については加算対象期間が相続開始前7年以内になる旨を示しています。

ただし、孫であっても注意が必要です。たとえば、次のような場合には、孫が相続または遺贈により財産を取得したものとして、生前贈与加算の対象になる可能性があります。

・祖父母と孫が養子縁組をしている場合
・祖父母より先に子が亡くなり、孫が代襲相続人になる場合
・遺言により孫へ財産を遺贈する場合
・死亡保険金の受取人が孫になっている場合

特に死亡保険金の受取人を孫にしているケースでは、「孫だから生前贈与加算の対象外」と誤解されやすいため注意が必要です。

世代を飛ばして財産を渡せる効果

孫への贈与には、世代を一つ飛ばして財産を移転できる効果もあります。

通常、祖父母の財産は、まず子へ相続され、その後、子から孫へ相続されます。つまり、祖父母から孫へ財産が移るまでに、相続税が複数回発生する可能性があります。

これに対して、祖父母から孫へ直接贈与すれば、子の世代を経由せずに財産を移すことができます。相続税率が高くなる見込みがあるご家庭では、早い段階から計画的に贈与を行うことで、全体としての税負担を抑えられる場合があります。

ただし、贈与税は年間110万円の基礎控除を超えると課税されます。また、孫の年齢によって適用される税率が異なります。

贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の孫が、祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合には、特例税率が適用されます。一方、18歳未満の孫への贈与は一般税率により計算されます。国税庁も、直系尊属から18歳以上の者への贈与について特例贈与財産用の税率を示しています。

したがって、贈与額が大きい場合には、「いつ」「いくら」「誰に」贈与するかを慎重に設計することが重要です。

幼少の孫にも贈与はできるのか

結論として、幼少の孫に対しても贈与は可能です。

ただし、幼い孫本人が贈与契約の意味を理解し、自分で「もらいます」と承諾することは現実的ではありません。そのため、親権者である父母が、孫の法定代理人として贈与を受ける意思表示を行うことになります。

民法では、親権を行う者は子の財産を管理し、子の財産に関する法律行為について子を代表するとされています。 そのため、幼少の孫への贈与では、親権者が贈与契約に関与し、孫のために財産を管理する形を整えることが大切です。

実務上は、口頭だけで済ませるのではなく、贈与の都度、贈与契約書を作成することをお勧めします。契約書には、贈与者、受贈者、親権者、贈与日、贈与金額、贈与方法などを記載し、親権者が孫の法定代理人として署名押印する形が考えられます。

名義預金と判断されないための注意点

幼少の孫への贈与で最も注意すべき点は、名義預金と判断されないようにすることです。

たとえば、孫名義の預金口座に毎年お金を振り込んでいたとしても、その通帳や印鑑を祖父母が管理し、孫や親権者が存在を知らないような場合には、実質的には祖父母の財産と判断される可能性があります。

また、親権者が管理している場合でも、そのお金を親の生活費や家計費に流用してしまうと、孫への贈与ではなく、親への贈与と見られる可能性があります。

名義預金と疑われないためには、次のような対応が重要です。

・贈与契約書を毎回作成する
・現金手渡しではなく銀行振込で記録を残す
・孫名義の口座で管理する
・親権者が孫のために財産を管理していることを明確にする
・贈与税が発生する場合には申告と納税を行う
・孫が成人した後は、通帳や印鑑、キャッシュカードを本人に引き渡す

特に、孫が18歳になった後も親や祖父母が口座を管理し続けている場合には、「孫が自由に使える状態ではなかった」と判断されるおそれがあります。

贈与は金額だけでなく設計が重要

生前贈与は、単に毎年110万円以内で行えばよいというものではありません。相続財産の規模、相続人の人数、孫の年齢、贈与後の管理方法、将来の生活資金、死亡保険金の受取人などを総合的に確認する必要があります。

また、孫が複数いる場合には、贈与額のバランスにも配慮が必要です。特定の孫だけに多額の贈与を行うと、将来の相続時に親族間トラブルの原因になることもあります。

相続税対策として有効な贈与であっても、契約書や管理実態が不十分であれば、税務調査で否認されるリスクがあります。そのため、幼少の孫への贈与を検討する場合には、実行前に相続税に詳しい税理士へ相談することをお勧めします。

おわりに

幼少の孫への生前贈与は、相続税対策として有効な方法の一つです。孫へ直接財産を移すことで、相続財産を減らし、世代を飛ばして財産を承継できる可能性があります。

一方で、幼少の孫への贈与では、贈与契約の成立、親権者による管理、名義預金と判断されないための証拠づくりが非常に重要です。形式だけ孫名義にしていても、実質的に祖父母や親が自由に管理・使用していれば、相続税対策として認められない可能性があります。

弊所では、福岡を中心に、熊本など九州エリアの相続税申告・生前贈与・相続税対策に関するご相談に対応しております。来所またはオンライン面談による初回無料相談も実施しておりますので、幼少のお孫様への贈与を検討されている方は、実行前に一度ご相談ください。贈与契約書の作成方法、贈与額の設計、名義預金対策まで、相続税の観点から丁寧にサポートいたします。

keyboard_arrow_up

0925330707 問い合わせバナー 無料相談について