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はじめに
相続税の財産評価は、原則として「被相続人が亡くなった日」、つまり相続開始日時点の価値によって行います。
土地や預貯金、株式などと同じく、建物についても相続開始日時点の状態を基準に評価することになります。特に注意が必要なのが、被相続人の生前に自宅や賃貸物件について、バリアフリー工事、増改築、リノベーション、キッチン・浴室の交換などのリフォーム工事を行っているケースです。
通常、相続税における家屋の評価は、固定資産税評価額を基に計算するため、一見すると簡単に思われます。しかし、リフォーム工事の内容によっては、固定資産税評価額にまだ反映されていない価値を、相続税評価に加味しなければならない場合があります。
そのため、相続税申告において建物を評価する際は、「固定資産税評価額だけを見ればよい」と単純に判断するのではなく、工事の内容、時期、金額、固定資産税評価額への反映状況を確認することが重要です。
相続税における家屋の基本的な評価方法
相続税の財産評価において、自用家屋、つまり被相続人が所有し、自宅などとして使用していた建物は、原則として1棟ごとに評価します。
基本的な計算方法は、次のとおりです。
家屋の評価額=固定資産税評価額×1.0
つまり、通常の家屋であれば、市区町村から送付される固定資産税課税明細書などに記載された固定資産税評価額を確認し、その金額を相続税評価額として使用することになります。
固定資産税評価額は、市区町村が固定資産評価基準に基づいて算定するもので、同じ建物を評価時点に新築した場合に必要とされる再建築費を基礎とし、建築後の経過年数による減価などを考慮して決定されます。
そのため、相続税申告では、まず固定資産税課税明細書や名寄帳を確認し、対象となる建物の固定資産税評価額を把握することが出発点になります。
未登記建物や固定資産税評価額がない建物には注意
建物が未登記であっても、多くの場合、市区町村では固定資産税の課税対象として把握され、固定資産税評価額が付されていることがあります。
しかし、増築部分や古い附属建物などについて、固定資産税評価額が付されていないケースもあります。この場合、相続税評価では、その建物や増改築部分を無視してよいわけではありません。
固定資産税評価額がない場合には、状況の類似した近隣の家屋の固定資産税評価額を参考にし、構造、用途、経過年数などの違いを考慮して評価する方法が考えられます。また、類似する家屋がない場合には、増改築部分の再建築価額から相続開始時点までの減価を考慮した金額の70%相当額を基に評価する取扱いが参考になります。
このように、固定資産税評価額がないからといって評価不要になるわけではなく、合理的な方法により相続税評価額を算定する必要があります。
リフォーム工事をした場合の確認ポイント
相続開始前にリフォーム工事をしている場合は、その支出が「修繕費」に近いものなのか、それとも建物の価値を高める「資本的支出」に近いものなのかを確認する必要があります。
たとえば、雨漏りの補修、外壁の塗装、壁紙の張替え、壊れた設備の修理など、建物を元の状態に戻すための工事であれば、一般的には修繕的な性質が強いと考えられます。このような工事は、建物の価値を新たに高めるというより、通常の維持管理や原状回復に近いため、相続税評価額に別途加算する必要性は高くありません。
一方で、床面積を増やす増築工事、間取り変更を伴う大規模リノベーション、キッチンや浴室などの設備を高性能なものに交換する工事、バリアフリー化によって建物の機能性を大きく向上させる工事などは、建物の価値を高める支出と判断される可能性があります。
このような資本的支出に該当する工事について、固定資産税評価額にまだ反映されていない場合には、相続税評価上、その増加した価値を考慮する必要があります。
固定資産税評価額に反映されているかを確認する
リフォームや増築を行った場合でも、その内容がすでに固定資産税評価額に反映されていれば、原則としてその固定資産税評価額を基に評価します。
しかし、工事の時期が相続開始直前であった場合や、市区町村の現地確認・評価替えがまだ行われていない場合には、固定資産税評価額にリフォーム後の価値が反映されていないことがあります。
このようなケースでは、工事契約書、見積書、請求書、領収書、施工写真、工事内容の明細などを確認し、どの部分が修繕で、どの部分が価値向上に当たるのかを整理することが重要です。
特に相続税の税務調査では、相続開始前の大きな支出について確認されることがあります。高額なリフォーム代金が預金口座から支払われているにもかかわらず、建物評価に何も反映されていない場合、税務署から説明を求められる可能性があります。
建築中の家屋がある場合
相続開始時点で建築中の家屋については、通常、固定資産税評価額がまだ付されていません。
この場合の評価は、相続開始時点までに投下された建築費用を基に計算します。具体的には、建築中の家屋の価額は、費用現価の70%相当額によって評価します。
建築中の家屋の評価額=費用現価の額×70%
ここでいう費用現価とは、相続開始日までにその家屋に投下された建築費用を、相続開始時点の価額に引き直した金額をいいます。
建築途中の建物については、請負契約書、工事出来高、支払済み金額、請求書などを確認し、相続開始時点でどこまで工事が進んでいたのかを整理する必要があります。
相続税申告では資料の保存が重要
リフォームや増改築がある建物の相続税評価では、資料の有無が非常に重要です。
最低限、次のような資料は確認・保存しておくことをおすすめします。
・工事請負契約書
・見積書、請求書、領収書
・工事内容の明細
・施工前後の写真
・固定資産税課税明細書
・建物図面
これらの資料があれば、税務署に対して評価額の根拠を説明しやすくなります。反対に、資料が不足していると、工事内容の判定や評価額の算定が難しくなり、結果として相続税申告のリスクが高まることがあります。
おわりに
家屋の相続税評価は、基本的には固定資産税評価額を基に計算するため、土地評価に比べると簡単に見えるかもしれません。
しかし、実際には、未登記建物、増築部分、リフォーム工事、建築中の家屋などがある場合、固定資産税評価額だけでは適正な評価ができないことがあります。
特に、相続開始前に高額なリフォーム工事をしている場合、その工事が単なる修繕なのか、建物の価値を高める資本的支出なのかを慎重に確認する必要があります。固定資産税評価額に反映されていない工事があるにもかかわらず、その価値を相続税評価に含めていない場合、後日の税務調査で問題となる可能性もあります。
相続税申告では、建物そのものの評価だけでなく、預金の動き、工事代金の支払い、登記の有無、固定資産税評価額への反映状況などを総合的に確認することが重要です。
リフォーム済みの自宅や賃貸物件、未登記建物、建築中の家屋が相続財産に含まれる場合には、早い段階で相続税に詳しい税理士へ相談することをおすすめします。
当事務所では、相続税申告に関する初回無料相談を行っております。建物の評価方法が分からない場合や、リフォーム工事を相続税評価に反映すべきか判断に迷う場合には、お気軽にご相談ください。適正な財産評価を行うことで、申告漏れや過大申告を防ぎ、安心して相続税申告を進めることができます。

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