このページの目次
はじめに
「遺言書が見つかった場合、相続税の申告は必要なのか」
「遺言書どおりに財産を分ければ、相続税は安くなるのか」
「相続人ではない孫や親族が財産を受け取る場合、税金はどうなるのか」
このようなご相談は、相続税の実務において非常に多くあります。
結論から申し上げると、遺言書があること自体によって、相続税の仕組みが変わるわけではありません。
相続税は、亡くなった方の財産総額、法定相続人の数、財産を取得した人、各人が取得した財産の金額などに基づいて計算されます。
ただし、遺言書によって「誰が」「どの財産を」「どれだけ取得するか」が変わるため、結果として相続税を負担する人や税額が大きく変わることがあります。
たとえば、長男が自宅不動産を取得し、次男が預貯金を取得する場合と、長男が大部分の財産を取得する場合とでは、各人の相続税負担は異なります。また、孫や兄弟姉妹、内縁関係の方など、法定相続人以外の方に財産を遺贈する場合には、相続税の2割加算や納税資金の問題が生じることもあります。
相続税は、単に「遺言書があるかどうか」ではなく、遺言書の内容と財産評価をセットで確認することが重要です。
相続税の申告期限は、原則として被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。国税庁も、正味の遺産額が基礎控除額を超える場合には、相続税の申告および納税が必要になると説明しています。
遺言書がある相続では、遺言の確認、検認、遺言執行、名義変更、相続税申告、納税資金の準備など、短期間で行うべき手続きが多くなります。
そのため、遺言書が見つかった段階、または遺言書を作成しようと考えた段階で、早めに税理士へ相談することをおすすめします。相続税がかかるかどうか分からない場合でも、無料相談を活用することで、申告の要否やおおまかな税負担を事前に把握しやすくなります。
遺言書がある場合でも相続税の基本的な考え方は変わらない
遺言書とは、被相続人、つまり亡くなった方が、自分の財産を誰にどのように承継させるかを示す意思表示です。
遺言書があることで、相続人同士の話し合いを待たずに、被相続人の意思に沿った財産承継を進めやすくなります。特に、不動産、自社株、事業用資産、預貯金、生命保険金などがある場合には、遺言書によって承継先を明確にしておくことは非常に有効です。
一方で、相続税は、遺言書の有無ではなく、相続や遺贈によって財産を取得した人に対して課される税金です。国税庁の説明でも、相続税は相続や遺贈によって取得した財産等の価額が基礎控除額を超える場合に課税されるとされています。
つまり、遺言書がある場合でも、まずは亡くなった方の財産全体を把握し、相続税の対象となる財産を評価する必要があります。
主な相続財産には、次のようなものがあります。
・土地、建物、マンションなどの不動産
・預貯金、現金、有価証券
・自社株式、出資金、事業用資産
・生命保険金、死亡退職金
・貸付金、未収金、ゴルフ会員権、貴金属など
・相続開始前の一定期間内に行われた贈与財産
ここで注意すべきなのは、遺言書に書かれていない財産が後から見つかることがある点です。
たとえば、遺言書には自宅と預貯金だけが記載されていたものの、実際には証券口座、貸付金、名義預金、海外資産、未収家賃などが存在するケースがあります。このような財産を漏らしたまま相続税申告をすると、後日、税務署から指摘を受け、追徴課税の対象となる可能性があります。
したがって、遺言書がある場合でも、税理士による財産調査と相続税の試算は非常に重要です。
遺言書によって相続税を負担する人が変わる
相続税は、最終的には「実際に財産を取得した人」が負担します。
たとえば、遺言書に次のような内容があったとします。
・自宅土地建物は長男に相続させる
・預貯金は長女に相続させる
・証券口座は次男に相続させる
・一部の現金を孫に遺贈する
この場合、それぞれの人が取得した財産の価額に応じて、相続税の負担額が決まります。
ここで誤解されやすいのが、「自分が受け取った財産だけに税率をかければよい」という考え方です。実際の相続税は、単純に各人の取得額に直接税率をかけるのではありません。
相続税の計算では、まず各人の課税価格を合計し、そこから基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を計算します。その後、法定相続分に応じて相続税の総額を計算し、最終的に各人の取得割合に応じて税額を割り振ります。国税庁も、課税価格の合計額から基礎控除額を差し引き、その後、法定相続分を基準に相続税の総額を計算する流れを示しています。
この仕組みがあるため、遺言書によって特定の相続人に財産が集中すると、その人の納税負担も大きくなります。
特に、不動産を多く取得する人は注意が必要です。不動産は評価額が大きくなりやすい一方で、すぐに現金化できるとは限りません。そのため、相続税は発生するものの、納税資金が足りないという問題が起こることがあります。
遺言書を作成する場合には、「誰に何を渡すか」だけではなく、「その人が相続税を納められるか」まで考える必要があります。
孫や相続人以外の人に遺贈する場合は2割加算に注意
遺言書では、法定相続人以外の人に財産を渡すこともできます。
たとえば、次のようなケースです。
・孫に預貯金を遺贈する
・長男の配偶者に財産を遺贈する
・内縁の配偶者に不動産を遺贈する
・お世話になった親族や知人に現金を遺贈する
このような遺贈は、被相続人の意思を実現する有効な方法です。
しかし、税務上は注意が必要です。財産を取得した人が被相続人の配偶者、父母、子以外である場合、原則として相続税額に20%相当額が加算されることがあります。国税庁も、配偶者・父母・子以外の者が財産を取得した場合には、相続税額に20%相当額を加算する旨を説明しています。
孫についても注意が必要です。
子がすでに亡くなっており、孫が代襲相続人となる場合には、通常、2割加算の対象にはなりません。一方で、子が存命であるにもかかわらず孫に遺贈する場合には、原則として2割加算の対象となります。
「かわいい孫に財産を残したい」というお気持ちは自然なものですが、税負担を考えずに遺言書を作成すると、孫に思わぬ納税負担をかけてしまうことがあります。
また、未成年の孫に財産を遺贈する場合には、財産管理の問題も生じます。預貯金や不動産を未成年者が取得した場合、親権者や特別代理人の関与が必要になることもあります。
このように、遺言書で相続人以外の人に財産を渡す場合には、法律面だけでなく、相続税・贈与税・所得税・登記・財産管理まで含めて検討することが重要です。
遺言書があっても相続税申告が不要になるわけではない
遺言書があると、「遺言書どおりに分ければ手続きは終わり」と考えてしまう方がいます。
しかし、遺言書があっても、相続税の申告が必要な場合があります。
相続税の基礎控除額は、次の算式で計算します。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
国税庁も、基礎控除額はこの算式で計算すると示しています。
たとえば、法定相続人が配偶者と子2人の合計3人であれば、基礎控除額は4,800万円です。
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
この場合、正味の遺産額が4,800万円以下であれば、原則として相続税はかかりません。一方で、正味の遺産額が4,800万円を超える場合には、相続税申告が必要になる可能性があります。
ここでいう正味の遺産額には、不動産、預貯金、有価証券などの財産だけでなく、相続時精算課税の適用を受けた贈与財産や、相続開始前の一定期間内の暦年贈与財産なども含まれる場合があります。
特に令和6年以降は、生前贈与加算の制度にも注意が必要です。過去の贈与が相続税に影響する可能性があるため、遺言書の内容だけを見て相続税の有無を判断するのは危険です。
また、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使えば、結果として相続税がゼロになるケースもあります。しかし、これらの特例は、原則として相続税申告書を提出しなければ適用できません。
「税額が出ないから申告しなくてよい」と判断してしまうと、特例を使えず、かえって税負担が発生することがあります。
相続税の申告が必要かどうか迷う場合は、自己判断せず、税理士の無料相談を利用して確認することをおすすめします。
遺言書の種類と相続手続きの流れ
遺言書には、主に次の種類があります。
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言
実務上よく使われるのは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。
自筆証書遺言は、遺言者が自分で作成する遺言書です。費用を抑えやすい一方で、形式不備、内容のあいまいさ、紛失、改ざん、発見されないリスクがあります。
公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言書です。形式不備のリスクが低く、原本が公証役場に保管されるため、実務上は安全性が高い方法といえます。
自筆証書遺言が見つかった場合には、原則として家庭裁判所での検認手続きが必要です。裁判所は、遺言書の保管者または発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求しなければならないと説明しています。なお、公正証書遺言や法務局で保管されている自筆証書遺言に関して交付される遺言書情報証明書は、検認の必要がありません。
検認は、遺言書の存在や内容を相続人に知らせ、偽造・変造を防止するための手続きです。遺言書の有効・無効を判断する手続きではありません。
一般的な流れは、次のとおりです。
- 遺言書の有無を確認する
- 自筆証書遺言の場合は検認の要否を確認する
- 相続人と受遺者を確認する
- 遺言執行者がいるか確認する
- 財産目録を作成する
- 不動産、預貯金、有価証券、自社株などを評価する
- 相続税の申告要否を判断する
- 名義変更や解約手続きを進める
- 相続税申告書を作成する
- 期限内に相続税を申告・納付する
この流れを見ると分かるように、遺言書があるからといって、相続手続きがすべて簡単になるわけではありません。
むしろ、遺言書の内容が複雑な場合や、受遺者が複数いる場合、不動産が多い場合、自社株が含まれる場合には、通常の遺産分割よりも専門的な判断が必要になることがあります。
遺言書と異なる分け方をした場合の相続税
遺言書がある場合、原則として遺言書の内容に従って財産を承継します。
しかし、相続人全員の合意など一定の条件が整えば、遺言書と異なる内容で遺産分割を行うこともあります。
たとえば、遺言書では長男が不動産を取得することになっていたものの、実際には長男が遠方に住んでいて管理できないため、同居していた長女が不動産を取得するようなケースです。
このような場合、相続税は、原則として実際に財産を取得した人に基づいて計算します。
ただし、遺言執行者がいる場合、受遺者がいる場合、遺留分の問題がある場合などは、相続人だけで自由に変更できるとは限りません。
また、遺言書と異なる分け方をした結果、特定の人に財産が偏ると、相続税の負担や納税資金にも影響します。
そのため、遺言書と異なる分け方を検討する場合には、弁護士や司法書士と連携しながら、税理士が相続税額を試算することが重要です。
不動産がある遺言書は特に税理士への相談が必要
遺言書に不動産が含まれている場合は、相続税の判断が難しくなります。
土地の相続税評価額は、固定資産税評価額や時価とは異なります。路線価地域であれば路線価を基礎に評価し、倍率地域であれば固定資産税評価額に倍率を乗じて評価します。
さらに、土地の形状、道路付け、間口、奥行、利用状況、貸付状況、借地権、私道、セットバック、地積規模の大きな宅地などによって評価額が変わります。
また、被相続人の自宅や事業用地、貸付用不動産については、小規模宅地等の特例が使える可能性があります。この特例が適用できるかどうかで、相続税額が大きく変わることがあります。
たとえば、遺言書で自宅を長男に相続させると記載されていても、その長男が小規模宅地等の特例を適用できる要件を満たしているかどうかは別問題です。
もし特例を使えない人が不動産を取得すると、相続税が想定以上に高くなる可能性があります。
遺言書を作成する段階で税理士に相談していれば、「誰が取得すれば特例を使いやすいか」「納税資金をどう確保するか」「不動産と預貯金の配分をどうするか」を事前に検討できます。
相続税対策として遺言書を作成する場合には、法律上の有効性だけでなく、税務上の有利不利まで確認することが大切です。
換価遺言・清算型遺贈がある場合の注意点
遺言書の中には、「不動産を売却し、その売却代金を相続人で分ける」といった内容が記載されていることがあります。
このような遺言は、一般に換価遺言や清算型遺贈と呼ばれることがあります。
一見すると公平に見えますが、税務上は注意が必要です。
不動産を売却した場合、相続税だけでなく、譲渡所得税が発生する可能性があります。特に、取得費が不明な古い土地や、取得価額が低い不動産を売却する場合には、譲渡所得が大きくなりやすいです。
また、相続税の申告期限までに売却が完了しない場合でも、相続税の申告・納付期限は原則として延びません。売却代金で相続税を納める予定だったにもかかわらず、売却が間に合わず、納税資金に困るケースもあります。
このような場合には、延納、物納、金融機関からの借入れ、不動産の一部売却など、早めに対策を検討する必要があります。
遺言書に不動産売却の内容が含まれている場合には、相続税と譲渡所得税の両方を見据えて、税理士に相談することが重要です。
税理士に無料相談した方がよいケース
遺言書がある相続では、次のような場合に税理士への相談をおすすめします。
・遺産総額が基礎控除を超えそうな場合
・不動産が複数ある場合
・自宅や貸家、アパート、駐車場がある場合
・相続人以外の人に遺贈がある場合
・孫に財産を残す内容になっている場合
・生命保険金や死亡退職金が多い場合
・過去に生前贈与をしている場合
・名義預金の可能性がある場合
・相続人同士で取得財産に差がある場合
・納税資金に不安がある場合
・配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使いたい場合
・相続税申告が必要かどうか判断できない場合
税理士に相談することで、相続税の概算額、申告の要否、特例適用の可能性、納税資金の準備、二次相続まで見据えた分け方を確認できます。
また、遺言書をこれから作成する場合にも、税理士へ事前相談するメリットは大きいです。
弁護士や司法書士は、遺言書の法的有効性や登記手続きの専門家です。一方、税理士は、相続税額、財産評価、特例適用、納税資金、二次相続対策を踏まえて助言できます。
遺言書は、法律面と税務面の両方から検討して初めて、実際の相続で役立つ内容になります。
「まだ相続が発生していないから相談するのは早い」と思われる方もいますが、実際には、生前の段階で相談した方が選択肢は多くなります。
遺言書の内容によって相続税が大きく変わる可能性があるため、まずは無料相談で現状を整理することをおすすめします。
おわりに
遺言書は、被相続人の意思を残し、相続人同士の争いを防ぐための大切な手段です。
しかし、遺言書があるからといって、相続税の問題が自動的に解決するわけではありません。
相続税は、誰がどの財産をどれだけ取得するかによって負担額が変わります。特に、不動産、自社株、孫への遺贈、相続人以外への遺贈、換価遺言、生前贈与がある場合には、税務上の判断が複雑になります。
また、相続税の申告期限は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。遺言書の確認、検認、財産調査、評価、名義変更、納税資金の準備を考えると、決して余裕のある期間ではありません。
遺言書が見つかった方、遺言書の内容に不安がある方、相続税がかかるか分からない方は、早めに税理士へご相談ください。
税理士に相談することで、相続税申告の要否、税額の概算、利用できる特例、納税資金の準備、二次相続を見据えた対策まで整理できます。
特に、相続税は一度申告して終わりではなく、後日の税務調査で財産漏れや評価誤りを指摘されることもあります。だからこそ、遺言書がある相続ほど、最初の段階で専門家に確認しておくことが重要です。
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