相続でよくある失敗と注意点

はじめに

相続では、「こうしたら、相続税が安くなるだろう」や「税理士への報酬が高いから申告書は自分で作ろう」などという気持ちから、専門知識もないままで相続対策や申告書の作成を行い、失敗する事例が多くあります。

このページでは、いくつかの事例を交えて、相続は専門知識がなくては失敗することが多い、ということを説明したいと思います。

相続での失敗事例

失敗事例1:貸駐車場にしたのに

《概要》

Aさんは、先祖代々から引き継いできた不動産(市街地農地)を所有していました。この土地は、もともと農地だったのですが、子どもたちも農業をするつもりはない、ということで、空き地となっていました。

その頃、「空き地のままで相続が起きると、相続税が高いらしい。空き地を駐車場にして貸せば、相続対策になるらしい。」と息子から持ち掛けられました。Aさんは、詳しい知識もないまま、空き地を駐車場として貸し出すことにしました。

その後、Aさんが亡くなり、相続が発生しました。しかし、貸駐車場は、貸し地とは認められず、相続対策にはなりませんでした。

《解説》

空き地などの更地は、相続税評価上、自用地として評価します。しかし、この土地を貸している場合、貸地の所有者は、自由に自分の土地を利用できないことから、土地の自由度が低下します。このように、自分の土地でありながら、貸し付けている土地の場合は、貸地として評価することになります。

貸地の相続税評価額は、更地としての価額から、借主の権利にあたる部分を差し引くことができます。

ところが、貸駐車場の場合の相続税評価額は、その土地を自分で駐車場を運営しているか、貸駐車場の運営会社に貸しているかによって相続税評価の方法が変わります。

土地の所有者が自分で駐車場設備を整備して貸駐車場を運営している場合は、その土地は自用地で評価します。ところが、土地の所有者がコインパーキングなど駐車場を運営する会社に貸している場合は、貸地と同様に借主の権利を考慮して、自用地評価額から賃借権の価額を引くことができます。

Aさんの場合は、貸駐車場を自分で運営していたため、評価額を下げることはできませんでした。

このように、同じ貸駐車場であっても、その運営のしかたによって相続税評価額は変わってきます。

失敗事例2:税理士なら誰でも同じだと思ったのに

《概要》

Bさんは、会社経営をしていました。そんなBさんが他界し、Bさんの長男は会社の顧問税理士に相続税申告をお願いしました。

Bさんの相続人は妻と長男、次男、長女です。遺言書はないのですが、Bさんは生前、会社の経営は長男に継いで欲しいと良く口にしていました。長男もそのつもりでいました。

ところが、Bさんの相続財産は、そのほとんどが自宅と会社の株式だったのです。

自宅は妻が相続することが決まったのですが、会社の株式を次男、長女が分割することを希望してきたため、遺産分割協議がまとまらず、そのまま相続税の申告期限を迎えてしまうこととなり、顧問税理士から「いったん、法定相続で申告書を提出しなくてはいけない」と告げられました。

相続人は、その直前まで、税理士からは特に税額の話しは聞いていなかったので、相続税の支払いが間に合わず、大変困ってしまいました。

《解説》

相続税申告書の提出と納税の期限は、通常、ご逝去日から10か月以内となります。相続の場合は、この10か月以内に法定相続人の確定、相続財産の調査と確定をし、どのように遺産を分割するのかを相続人の間で協議して、協議がまとまれば遺産分割協議書を作成し、遺産分割協議の内容に基づいて税理士が相続税申告書を作成していきます。

たとえば、Bさんのように、相続財産の内容が分割しにくい場合は、それぞれの意見がまとまらず、時間がかかることもあります。

そのような場合には、いったん、相続税の申告期限である10か月以内に未分割の状態で、法定相続分で計算した相続税申告書を提出することになるのですが、分割が確定していない場合は、相続税法上の配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が使えず、税額が多額になってしまいます。

相続人は税額軽減の特例等が使えないため、多額の相続税を準備しなくてはいけない結果となります。

相続税申告に慣れている税理士であれば、遺産分割協議が長引いたときのリスクを説明し、早めに協議をまとめることを促したり、協議がまとまらない場合の相続税額を試算して、納税資金の準備のための期間を設定します。

このように、相続税は、法人税や所得税と違った流れや手続きがあるため、Bさんの場合は、相続税申告に慣れていない、会社の顧問税理士へ依頼したため、相続税申告の期限までに分割協議が調わず、多額の相続税の準備に困ってしまった、という失敗事例です。

失敗事例3:二次相続まで考えず遺産の分割を決めてしまった結果

《概要》

Cさんは、8,000万円の財産を残して他界しました。Cさんの法定相続人は妻と長女でした。その後、妻が全財産を相続する遺産分割協議がまとまりました。

Cさんの法定相続人は、Cさんの妻と長女の二人です。その後、四十九日や初盆などの法要を終え、遺産分割協議をすることになりました。遺産は、自宅と預貯金、上場株式で合計8,000万円です。

長女は、自分が一人っ子なので、そのうち全財産は自分が相続するのだからと、あまり気にせず、妻がすべての遺産を相続することに同意しました。そして、遺産分割協議はすんなり調いました。

その翌年、妻が病気で他界してしまいました。長女は、そのまま全財産を相続することになりました。

《解説》

相続の場合、亡くなった人(以下、被相続人といいます)と、その配偶者は年齢が近いことが多く、相続が続けて起きる可能性が高くなります。

最初の相続を一次相続、次の相続を二次相続といいます。相続の場合、一次相続の税額(一次相続税)と二次相続の税額(二次相続税)まで考えて遺産分割をしないと、ほぼ同じ財産にかかる相続税なのですが、一次相続税と二次相続税の合計額が大きく異なる場合があります。

その点について解説いたします。

一次相続と二次相続での大きな違いは、

①相続税の基礎控除額が減る
②配偶者の税額軽減の特例が使えない

ということです。

Cさんの場合、一次相続で8,000万円の遺産を妻がすべて相続したため、一次相続税はかかりません。その翌年、妻が他界した際は、基礎控除額が相続人ひとりなので、3,600万円。配偶者の税額軽減もありません。

また、一次相続では妻が適用できた、小規模宅地の特例も長女は自宅があったため適用できませんので、相続税額は680万円となってしまいます。仮に、一次相続を法定相続分で相続していた場合、一次相続税は235万円、二次相続税は40万円となり、合計でも275万円で済みます。同じ8,000万円の財産を相続するのに、こんなに税額に差が出るのです。

ここで、相続専門の税理士であれば、一次相続税と二次相続税を含めたトータルでの節税案を提示することができます。

この事例は、安易に遺産分割をしてしまったため、相続税額が多額にかかってしまったという失敗事例です。

まとめ

このページでは、相続で失敗した事例を3つご説明いたしました。相続の場合は、財産評価や遺産分割のしかたによって、税額が大きく変わることがおわかりになったのではないでしょうか。また、相続税申告は相続の場合のスケジュール管理を間違えると、納税資金の調達に困窮する事態となることもおわかり頂けたかと思います。

当税理士事務所では、相続税の申告経験が豊富な税理士が対応いたします。また、相続がすでに発生している方につきましては、無料相談を行っておりますので、是非ご相談ください。

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