生前対策~生前にやるべき対策とは

はじめに

生前対策」とは、どういうことなのか、ご存知でしょうか。生前に対策をしないままで相続が発生した場合、相続税が高くなることがあります。また、死亡後に相続人間でトラブルが起きることもあります。さらに、納税資金を考慮して財産を残すことで、相続人が納税資金に困窮することを防ぐこともできます。

このページでは、生前にしておくべき対策について、そのメリットやデメリットも含め、詳しく解説いたします。ご自身に合った生前対策を今のうちからしておきましょう。

生前にやるべき対策

生前にやるべき対策は、いくつもあります。これらの対策は、相続における様々な面で大変有効です。思い当たる対策があれば、早目に行うことをお勧めいたします。

生前贈与の非課税を利用して財産を減らす

贈与税は、暦年課税の場合、受贈者1人あたり110万円までは贈与税がかかりません。また、110万円の基礎控除以外にも贈与税の非課税を利用することで財産を減らすことが可能となります。以下に、贈与税の非課税についてご説明いたします。

1. 生活費や教育費のための贈与

日常生活に必要な費用や学費、教材費などについては、必要と認められる範囲の贈与が非課税となります。

2. 冠婚葬祭や見舞いなどのための金品

香典、年賀、祝儀、見舞金などで、社会通念上相当と認められる範囲の贈与が非課税となります。

3. 婚姻期間20年以上の夫婦間で贈与した2,000万円までの居住用不動産

結婚から20年を経過後、自分が住むための国内居住用不動産や居住用不動産の購入資金を夫婦間で贈与した場合、基礎控除とは別に2,000万円まで控除することができます。

4. 結婚、子育て資金の一括贈与

平成27年4月1日から令和7年3月31日までの間に、父母や祖父母が18歳(※1)以上50歳未満の子や孫に一括贈与した場合、1,000万円まで(結婚関係は300万円まで)が非課税となります。

5. 住宅取得等資金の贈与

令和4年1月1日から令和5年12月31日までに、父母や祖父母が18歳(※1)以上の子や孫に、住宅の取得資金や増改築資金を贈与する場合、一定の要件を満たせば、取得時期や住宅の省エネ能力に応じて、500万円から1,000万円までが非課税となります。

6. 教育資金の一括贈与

平成25年4月1日から令和5(※2)年3月31日までの間に、父母や祖父母が30歳未満の子や孫に、学費、学習塾や習い事、学習のための通学費や留学費などを贈与する場合、1,500万円までが非課税となります。

(※1)令和4年3月31日以前は20歳
(※2)令和5年度税制改正で令和8年まで延長が決定しています

遺言を残すことでトラブル回避

相続人の関係が複雑であるとか、相続人の一人に家業を継がせたいと思う場合など、被相続人の死後、トラブルが予想される場合は、是非、遺言書を作成しておきましょう。以下に当てはまる場合は、特に遺言を書いておくことをお勧めいたします。

  • 内縁関係の相手に財産を譲りたい
  • 相続関係が複雑
  • 子どもがいない
  • 認知した子がいる
  • 認知していない子がいる
  • 相続権のない人に財産を譲りたい
  • 家業の後継者を指定したい

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相続財産の評価額を下げるための生前贈与

相続税や贈与税の計算の基礎となる財産の評価は、国税庁の「財産評価基本通達」に則って評価します。相続や贈与時点での評価額が、相続税や贈与税の金額のもととなることを踏まえ、将来的に評価額が上がる見込みのある財産は、評価額が低いうちに贈与しておくことで、節税効果が高くなる場合があります。

たとえば、開発が進んでいる場所に不動産を持っている場合や、業績が好調な自社株などです。

納税資金のための対策

相続財産に不動産が多い場合などは、相続税が多額になり、納税資金が不足する場合があります。相続した不動産を売却して納税資金に充てようと思っても、売却には時間がかかり、納税の期限に間に合わない可能性があります。そのような場合は、生前に、相続財産を一部売却して、現金化し、現金を残しておくことにより、納税のための資金を準備しておくことができます。

また、生命保険に加入しておくことにより、金融機関の口座は凍結していても、受取人が保険会社に連絡し、必要書類を揃えて請求すれば即座に受け取ることができ、納税資金の準備が間に合わないことが防げます。

生命保険と相続税、贈与税

生命保険は、保険料の負担者、被保険者、保険金の受取人が誰であるかによって、課税される税金(所得税、相続税、贈与税)が違ってきます。相続税、贈与税との関係についてみてみましょう。

まず、被保険者が保険料を負担していた生命保険では、被保険者が亡くなった場合、死亡保険金は指定された受取人のものになり、遺産分割協議の対象になりません。一方、みなし相続財産として他の相続財産に加算され、相続税の対象となります。

この場合、指定されていた受取人が被相続人の法定相続人であれば、生命保険金の非課税の適用が受けられますが、受取人が法定相続人でない場合は、生命保険金の非課税の適用は受けられません。

保険料負担者と被保険者、受取人が別々の場合、保険金は保険料負担者から受取人への贈与とみなされ(みなし贈与)、贈与税が課せられます。

次に、満期保険金の場合、保険金の受取人が保険料負担者以外の場合は、保険料負担者から受取人への贈与になり、受取人に贈与税がかかります。

以下の図を参考にしてください。なお、分かりやすいように、夫、妻、子、相続人以外、としています。

死亡保険金・満期保険金と税金

  保険料負担者 被保険者・事由 受取人 税金
死亡保険金 夫・死亡 妻(法定相続人) 妻に相続税(非課税の適用あり)
夫・死亡 法廷相続人以外の人 受取人に相続税(非課税の適用なし)
妻・死亡 夫に所得税(一時所得)
妻・死亡 子に贈与税
満期保険金 妻・満期 夫に所得税(一時所得)
妻・満期 妻に贈与税

生前贈与の注意点

毎年子や孫に贈与を続ける時(連年贈与)

毎年同じ金額を贈与し続けることを「連年贈与」といいます。連年贈与をすると、総額について「定期金の贈与」とみなされ、贈与税が課せられることがあります。

例えば、子や孫に毎年110万円ずつ10年間にわたって贈与した場合に、「合計1,100万円を毎年110万円、10年間に分けて贈与した」とみなされ、一括して1,100万円に対して贈与税が課せられることがあります。

このような、「定期金の贈与」とみなされないためには、毎年贈与するたびに贈与契約書を作成する、贈与する金額や財産の種類を変更する、贈与する年月日を変更するなど、定期金の贈与とみなされないように注意しましょう。

預貯金口座への振り込み

たとえば、贈与する人(贈与者)が、もらう人(受贈者)名義の預貯金口座を開設し、その口座に贈与する金額を振り込み、印鑑や通帳も保管している場合、「名義預金」とみなされることがあります。名義預金とみなされた場合は、相続財産として、相続税の課税対象となってしまいます。

名義預金とみなされないために、受贈者自身が自分の印鑑を使用して振り込み口座を開設し、通帳と印鑑は自分で管理するようにしましょう。

贈与税の配偶者控除と相続税の配偶者の税額軽減

自宅や自宅の購入資金を、婚姻期間が20年以上の配偶者に贈与した場合、贈与税の配偶者控除があります。一方、相続税には配偶者の税額軽減があり、配偶者が相続した財産のうち1億6,000万円までは相続税がかかりません。

このように、配偶者には、相続税でも贈与税でも、節税効果の高い制度が設けられています。

ところで、贈与税の配偶者控除では、贈与税は軽減されますが、贈与財産が不動産の場合には、登記をする際の登録免許税が高くなります。

また、相続ではかからない不動産取得税もかかりますので、贈与の配偶者控除を利用する方が有利なのか、相続によって配偶者に渡す方が有利なのかは、一概に判断できませんので、それぞれの税額を比較検討して決めることが大切となります。

暦年課税か相続時精算課税制度かの選択

暦年課税を選択すると、年間110万円までの贈与は非課税となります。一方、相続時精算課税制度を用いると、特定の条件下で2,500万円まで贈与税がかかりません。

令和5年度税制改正において、相続時精算課税制度を選択した場合、110万円以下の贈与は非課税となりました。また、暦年課税の場合、相続開始前7年間の生前贈与が相続財産に加算されることが決まりました。今後はどちらを選択して生前贈与をするのかを注意する必要があります。

税理士へ依頼するメリット

生前対策にはいろいろな方法があることを説明して参りました。また、たくさんの注意点があることもお分かりになったのではないでしょうか。

生前対策による節税効果は、人それぞれ違う、ということも申し上げておきます。税理士は、相続人関係や財産内容を詳しく聞きとったうえで、どの程度の節税になるか、という具体的な金額も含めて、ご提案いたします。

また、生前対策をした場合の贈与税申告書の提出も手伝いしますので、安心してご相談ください。

まとめ

相続税の節税のための生前贈与は大変有効であり、これまでも活用されて来ました。

令和5年度税制改正により、令和6年1月1日以降の贈与により取得する財産の相続財産への持ち戻し期間が3年から7年に延長されることや、相続時精算課税制度を選択した場合は、現行の特別控除2,500万円とは別途、基礎控除110万円を控除することができるようになったことで、生前対策のための生前贈与が今までと違って来るように思います。

生前対策は、税金との関りが大きいため、今後も税制の動向を踏まえたうえでの生前対策を行っていかなくてはいけません。

当事務所は福岡を中心に北海道から沖縄までの全国を対応しております。

ご自身に合った生前対策の方法につきましては、相続税申告の経験豊富な当税理士事務所へご相談ください。

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