空室がある貸家建付地の評価方法|相続税申告で注意すべきポイントを税理士が解説

はじめに

相続税対策として、現金を賃貸アパート・マンション・貸店舗などの不動産に組み替える方法は、よく検討される対策の一つです。

現金は、相続税評価上、原則として額面そのままが課税対象になります。一方で、不動産は土地であれば路線価、建物であれば固定資産税評価額を基準に評価されるため、実際の購入価格や時価よりも低い金額で評価されることが一般的です。

さらに、その不動産が賃貸用である場合には、「貸家建付地」として土地の評価額を下げられる可能性があります。

しかし、ここで注意しなければならないのが、相続開始時点で空室がある場合です。

「賃貸物件だから当然に貸家建付地評価が使える」と考えていると、相続税申告の際に評価誤りとなる可能性があります。特に、空室期間が長い場合や、親族に無償または低額で貸している場合には、税務署から評価の妥当性を確認されることもあります。

この記事では、空室期間がある場合の貸家建付地評価について、相続税申告で注意すべきポイントを税理士の視点から解説します。

貸家建付地とは

貸家建付地とは、他人に貸している建物が建っている土地のことをいいます。

たとえば、賃貸アパート、賃貸マンション、貸店舗、貸事務所、一戸建ての賃貸住宅などの敷地が該当します。

自宅の敷地であれば、所有者が自由に利用したり、売却したりすることができます。しかし、賃貸物件の敷地については、建物を借りている入居者が存在するため、所有者が自由に利用できる範囲が制限されます。

このような利用制限を考慮して、相続税評価では、自用地としての評価額から一定額を控除することが認められています。

つまり、貸家建付地評価は、賃貸物件を所有している場合の相続税評価額を引き下げる重要な制度です。

貸家建付地の評価方法

貸家建付地の評価額は、一般的に次の算式で計算します。

自用地としての評価額 − 自用地としての評価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合

ここで重要になるのが「賃貸割合」です。

たとえば、自用地としての土地評価額が1,000万円、借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%の場合、評価減は次のようになります。

1,000万円 × 60% × 30% × 100% = 180万円

したがって、貸家建付地としての評価額は、

1,000万円 − 180万円 = 820万円

となります。

一方、同じ土地であっても、賃貸割合が50%であれば評価減は90万円にとどまり、土地評価額は910万円になります。

このように、空室の有無は相続税評価額に直接影響します。空室が多ければ多いほど、貸家建付地による評価減は小さくなり、相続税額が増える可能性があります。

空室がある場合の注意点

賃貸物件に空室がある場合、その空室部分を賃貸割合に含められるかどうかが問題になります。

よく「空室期間が1カ月を超えると貸家建付地評価は使えない」といわれることがあります。しかし、この1カ月という期間だけで機械的に判断されるわけではありません。

重要なのは、その空室が一時的なものかどうかです。

たとえば、相続開始前から継続して賃貸物件として運用されており、退去後すぐに入居者募集を行っていた場合には、相続開始日にたまたま空室であっても、賃貸されていた部分として取り扱える余地があります。

反対に、長期間入居者募集をしていない、空室部分を物置として使用している、親族に無償で住まわせている、賃貸物件としての実態が乏しいという場合には、その部分は空室扱いとなる可能性があります。

特に、親族に相場より著しく低い賃料で貸しているケースでは、形式上は賃貸借契約があっても、税務上は貸家建付地評価が否認されるリスクがあります。

判断のポイント

空室部分を賃貸割合に含められるかどうかは、次のような事情を総合的に見て判断します。

・相続開始前から継続して賃貸物件として使われていたか
・退去後、速やかに入居者募集を行っていたか
・不動産会社に募集依頼をしていたか
・空室期間中に他の目的で使用していなかったか
・相続開始後も賃貸物件として運用を継続しているか
・空室が一時的なものと説明できるか

相続税申告では、単に「空室期間が短いか長いか」だけでなく、賃貸物件として継続的に運用されていた実態を説明できるかが重要です。

そのため、入居者募集の資料、管理会社とのやり取り、募集広告、賃貸借契約書、家賃入金履歴などは大切な資料になります。

税務調査で確認された場合に備え、申告時点から根拠資料を整理しておくことが望ましいです。

相続税対策として賃貸不動産を持つ場合の注意点

賃貸不動産は、相続税評価額を下げる効果が期待できる一方で、空室リスク、修繕費、借入金返済、金利上昇、家賃下落などのリスクもあります。

「相続税が下がるから」という理由だけで不動産を購入すると、かえって資金繰りが悪化したり、相続人間で分けにくい財産になったりすることもあります。

また、相続税申告では、貸家建付地評価だけでなく、小規模宅地等の特例、借入金の債務控除、建物評価、賃貸割合、共有関係、遺産分割の内容などもあわせて検討する必要があります。

特に賃貸不動産を複数所有している場合や、空室が多い物件を相続した場合には、評価方法によって相続税額が大きく変わる可能性があります。

おわりに

空室期間がある貸家建付地の評価は、相続税申告の中でも判断が難しい論点の一つです。

「相続開始日に空室だったから必ず評価減できない」というわけではありませんが、「賃貸物件だから当然に評価減できる」とも限りません。

大切なのは、その空室が一時的なものか、継続して賃貸募集をしていたか、賃貸物件としての実態があるかを具体的な資料で説明できることです。

貸家建付地の評価を誤ると、相続税を多く払い過ぎてしまう場合もあれば、逆に過少申告となり、後日税務署から指摘を受ける場合もあります。

相続財産にアパート、マンション、貸店舗、貸事務所などの賃貸不動産が含まれている場合には、早い段階で相続税に詳しい税理士へ相談することをおすすめします。

当事務所では、相続税申告に関する無料相談を承っております。空室がある賃貸物件の評価、貸家建付地の適用可否、不動産を活用した相続税対策についても、具体的な資料を確認しながら丁寧にご説明いたします。

相続税申告で不安がある方、賃貸不動産の評価に迷われている方は、まずはお気軽にご相談ください。

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