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はじめに
決算賞与とは、企業がその年度の業績に応じて支給する賞与です。定期的に支給される通常賞与(ボーナス)とは異なり、その期の利益や資金状況に基づき決定される「臨時的な賞与」として位置付けられます。本記事では、決算賞与の概要や支給時期、メリット・デメリット、さらに注意点について解説します。
決算賞与とは?
決算賞与は企業の業績を反映して支給される賞与です。一般的な夏季や冬季のボーナスと異なり、その年の業績次第で金額が決まるため、特に好業績の企業で支給されることが多いです。
企業が決算賞与を支給するメリット
従業員のモチベーション向上
決算賞与を支給することで、従業員の仕事への意欲や組織への帰属意識が向上します。「会社が利益を還元してくれる」という実感は、従業員のパフォーマンス向上や新しいアイデアの創出につながります。
損金算入による節税効果
法人税法の要件を満たすことで、決算賞与は損金算入が可能です。損金に計上できれば課税所得が減少し、結果として法人税の負担が軽減されます。業績好調な企業にとって、従業員に報酬を支払いながら税負担を抑えられる点は大きなメリットです。
決算賞与のデメリット
キャッシュフローの悪化
決算賞与を支給すると、企業の手元資金が減少します。短期的には資金繰りに影響を与える可能性があり、特に運転資金や設備投資用資金の不足には注意が必要です。十分な資金計画を立てた上で支給額を決定することが重要です。
従業員の期待値管理
決算賞与を一度支給すると、翌年も同様の期待を従業員に与える可能性があります。もし支給されなかった場合、モチベーション低下を招く恐れがあるため、中長期的な期待値コントロールが必要です。たとえば、目標達成時のみ支給するといった条件設定を行うことが有効です。
支給に際しての注意点
決算賞与を適切に支給するためには、以下のポイントを押さえましょう。
1. 損金算入のための3つの要件
法人税法施行令第72条の3第2号に基づき、決算賞与を損金算入するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
要件① 支給額の通知
その事業年度終了日までに、従業員ごとの支給額を明確に決定し、通知する必要があります。通知は口頭ではなく、書面やメールなどの記録が残る方法で行うことが望ましいです。通知が行われていない場合、支給額が曖昧と判断され、損金算入が認められません。
要件② 事業年度終了後1ヵ月以内に支給
通知した支給額を、事業年度終了日の翌日から1ヵ月以内に全額支給することが条件です。たとえば、12月決算の企業では翌年1月31日までに支給しなければなりません。この期限を1日でも過ぎると、損金算入は認められません。
要件③ 事業年度内での損金経理
通知した支給額を、その事業年度内において損金として計上しなければなりません。経理処理の記録が残っていない場合、税務調査時に要件未達と見なされる可能性があります。
2. 通知額どおりの支給が必須
通知した支給額を一切変更せず支給しなければ、損金算入は認められません。
たとえば、利益見込みが変動した場合や資金不足で支給額を減額した場合、通知時の金額との差異が生じることで税務上の要件を満たさなくなります。金額の変更が発生しないよう、通知前に十分な計算と検討を行いましょう。
3. 退職者の支給漏れに注意
通知時点で在籍していた従業員が支給日までに退職した場合でも、退職者分の支給を漏らさないことが重要です。たとえば、振込リストから退職者が漏れた場合、損金算入の条件を満たせなくなります。退職者への支給漏れを防ぐため、通知後の人事状況を管理し、退職予定者にも適切に支給を行う仕組みを構築しましょう。
4. 役員への支給は損金算入不可
決算賞与は従業員向けの制度であり、役員への支給分は損金算入の対象外です。役員報酬には、税務上「定期同額給与」や「事前確定届出給与」という特別なルールが適用されます。事前確定届出給与では、支給額と支給日を事前に税務署へ届け出る必要があり、届出と異なる金額や支給タイミングになると損金算入が認められません。役員報酬と決算賞与の区分を明確にし、混同しないよう注意が必要です。
おわりに
決算賞与は、従業員への利益還元として魅力的な制度ですが、企業にとってはキャッシュフローや税務の観点でリスクも伴います。メリットとデメリットを十分に理解し、慎重に検討することが重要です。また、損金算入の要件を満たすための手続きにも細心の注意を払いましょう。
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