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はじめに
未上場会社のオーナーが亡くなられた際、相続人が最も頭を悩ませるのが「自社株式の遺産分割」です。オーナーの財産の大半が自社株式で構成されているケースは珍しくありません。その結果、相続人同士で株式をどのように分けるかについて話し合いが難航し、遺産分割協議が長期化するケースも多く見受けられます。
特に、自社株式が複数の相続人に分散してしまうと、経営に関与しない株主が誕生し、会社の意思決定が滞るリスクもあります。こうした事態を防ぐために有効な方法の一つが、「自己株式の取得」という手法です。この記事では、未上場会社の相続で困っている方に向けて、自己株式取得の活用法について分かりやすく解説いたします。
自社株式の遺産分割で起こりがちな問題点
未上場会社の相続では、以下のような問題が発生しやすくなります。
- 相続人間での遺産分割協議がまとまらない
- 自社株式が複数の相続人に分散
- 経営に関与しない株主が意思決定に影響
- 会社運営が停滞
- 将来的な事業承継が困難になるリスク
こうした問題を放置してしまうと、会社の経営そのものに悪影響を及ぼす可能性もあるため、早急な対策が必要です。
相続時に活用できる「みなし配当特例」とは
自己株式の取得は、相続発生後の遺産分割の場面で有効です。通常、自社株式を会社に売却すると、売却代金のうち利益積立金相当額は配当とみなされ、最大約55%もの高い税率で課税されます。
しかし、相続税の申告期限から3年以内(相続開始から3年10か月以内)に限り、「みなし配当特例」により、配当課税を回避し、株式の譲渡所得として一律20.315%の税率で済む特例措置があります。
これにより、会社が相続人から株式を買い取ることで得た現金を、他の相続人への代償金や遺産分割の調整資金に活用することが可能となります。
※相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例(「みなし配当特例」)は、その者に相続税が生じていることや金銭を対価とする自己株式の取得であること等の要件を満たす必要があります。
自己株式取得の流れと実務上の注意点
自己株式取得の手続き概要
- 会社法に基づく手続き(株主総会決議など)
- 株式買取価格や取得株数の決定
- 他の株主への説明・同意取得
- 税務リスクの確認と事前相談
特に未上場会社の場合、株主構成が限定的であることが多いため、買取価格の決定や他の株主への説明は慎重に行う必要があります。
留意すべきポイント
留意点 | 内容 |
議決権割合の変動 | 自己株式取得後、他株主の議決権割合が相対的に上昇 |
財務への影響 | 現金支出により自己資本比率が低下 |
税務上の留意点 | 低額譲渡の場合はみなし譲渡課税やみなし贈与課税のリスク |
早めの事業承継対策が重要
自己株式取得の活用は相続発生後でも有効な手段ですが、本来であれば相続前からの準備が重要です。例えば、以下の制度も活用できます。
- 相続時精算課税制度
- 事業承継税制
- 生前贈与の活用
- 株主構成の整理
これらを組み合わせることで、より円滑で税務リスクの少ない事業承継が実現可能です。
おわりに
未上場会社の相続における自社株式の遺産分割は、極めて専門的かつ複雑な手続きを要します。自己株式取得による資金調達や遺産分割の調整は、有効な選択肢の一つですが、会社法や税法の知識が不可欠であり、慎重な対応が求められます。
相続発生後でも対応は可能ですが、最も重要なのは早めに事業承継対策を始めることです。当事務所では、未上場会社の相続や事業承継に関するご相談を多数承っておりますので、お困りの方はぜひお気軽にご相談ください。適切な対策で、円満な遺産分割とスムーズな事業承継を実現しましょう。
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税理士 久保 亮太のプロフィール