事前確定届出給与とは?仕組みと注意点を徹底解説

はじめに

事前確定届出給与は、役員報酬を事前に定めて税務署に届け出ることで、損金算入が可能になる制度です。役員報酬に関する制度の一つとして、節税対策としての利用されることも多いです。しかし、節税効果がある一方で、適切に利用しなければリスクを伴うことも。この記事では、事前確定届出給与の概要や手続き、メリット・デメリットを解説し、活用のポイントをご紹介します。

事前確定届出給与とは?

事前確定届出給与は、役員に支払う報酬額と支給時期を事前に決め、税務署に届け出ることで、役員賞与を損金算入できる制度です。通常の役員賞与は損金算入が認められませんが、届出を行うことでその制限が緩和されます。これにより、法人税の節税が可能になります。

他の役員報酬制度との違い

  • 定期同額給与

毎月一定額を支給する役員報酬。届出は不要ですが、原則として年に1回しか報酬額を変更できません。

  • 業績連動給与

会社の業績に応じて報酬額が変動。損金算入には所定の指標や公開条件が求められるため、主に上場企業向けです。

手続きの流れ

事前確定届出給与を利用するには、次の手続きが必要です。

1.株主総会での決議

役員報酬の支給額と支給日を決定し、議事録を作成します。

2.届出書の作成・提出

「事前確定届出給与に関する届出書」を作成します。国税庁のホームページから様式をダウンロードできます。

3.税務署への提出

届出書は次の①と②のうち、いずれか早い日までに届出を提出する必要があります。

  • 株主総会で決議した日、または職務執行開始日から1カ月以内
  • 会計期間開始日から4カ月以内

また、新規で法人を設立した場合は、設立日から2か月以内が提出期限になります。

注意点

事前確定届出給与は節税効果の高い制度ですが、利用にあたっては慎重な検討が必要です。以下では、特に注意すべきポイントを具体的に掘り下げて解説します。

1.届出内容と支給内容の相違によるリスク

事前確定届出給与は、届け出た内容通りに支給しなければ、全額が損金不算入となります。具体的には以下のようなケースが考えられます。

支給日がずれる場合

例:届出では「3月31日に500万円支給」としたのに、実際には3月30日に支給した場合。たとえ金額が一致していても、日付が異なるだけで損金算入は認められません。

また銀行休業日を支給日に設定すると、振込が翌営業日扱いになり、支給日が前後する恐れがあります。そのため設定の際には銀行休業日の確認も必要です。

支給金額の相違

例:届出では「3月31日に500万円支給」としたのに、実際には400万円しか支払わなかった場合。この場合も不一致部分だけでなく全額が損金不算入となります。

2. 退職金の減少

退職金は通常「最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率」の計算式で算出されます。

毎月の報酬額を低く設定していると、「最終報酬月額」が低くなり、結果的に退職金が少なくなってしまう可能性があります。

毎月の報酬と賞与(事前確定届出給与)のバランスを考慮し、将来の退職金への影響をシミュレーションすることが重要です。

3.高額報酬の設定による税務リスク

役員報酬について、不相当に高額な部分の金額は損金算入が認められません。

役員報酬額の決定の際は、税理士にご相談されることをおすすめします。

4.届出内容を変更できないリスク

事前確定届出給与は、一度届け出た内容を変更するには厳しい要件があります。以下の場合でないと変更が認められません:

  • 役員の職制変更

人事異動により役員に昇格した場合や退職した場合などです。

  • 職務内容の重大な変更

組織再編(例えば合併など)を行った結果、職務内容が変更された場合などです。

  • 経営状況の著しい悪化

ただし、「一時的な赤字」や「軽微な経営悪化」では変更が認められないケースが多いです。

おわりに

事前確定届出給与は、役員賞与を損金算入できる制度として、法人税の節税や社会保険料の軽減に有効です。しかし、適切な金額や支給時期を設定する必要があり、届出の不備があれば損金算入が認められません。

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